アフターコロナの企業研修の形態はどうなる
新型コロナウィルスの影響は多方面に及んでいる。私たちコンサルティング企業でも多くの影響がある。まずは、講師として出講する企業研修はそのほとんどが中止や延期に追い込まれている。当然ながら、講師が熱っぽく話すスタイルは、感染リスクに直結するので避けられるは当然だろう。わずかに、オンライン研修やビデオ研修(これはDVD等で納品して別時間帯に受講)があるがその数は少ない。
企業コンサルティングにあっても、企業を訪問してのコンサルティングは無理な状況と考えられ、特に都道府県をまたいでの移動を伴う企業訪問は極力避けることになった。したがって、一部ではZOOMやSKYPEを使ってのコンサルティングになった。そのような形態であっても、1対1でのコンサルティングであればスムーズに行えるとの感触がある。特に、移動時間がないのでずいぶんと楽になる。でもこれは、その時以前にクライアントとの人間関係がある程度出来上がっていないと、円滑な意思疎通は難しそうだ。
では、アフターコロナと呼ばれる時代の企業研修の形態はどのようになるだろうか考えてみたい。
オンライン研修・ビデオ研修の姿
コンサルティングはともかくとして、企業研修ではオンライン研修やビデオ研修が一つのカテゴリーとして広く普及するのだろうと予測される。先週のことだが、私が講師を務める形で二つの研修をビデオ収録した。タイトルは「事業計画策定」と「働き方改革・消費税・民法改正のポイント」というものだった。普通に考えると、これら内容が盛りだくさんと予測されるタイトルなら8時間、1日の研修になるだろう。ひょっとしたら、2日間の研修でもおかしくない。しかし、これらのビデオ研修では、各1時間程度におさめた。実をいうと、時間制約が課されたので無理に1時間におさめ切ったという感覚だったが、とにかく1時間で言いたいことを言い切った。まずは目の前に受講者がいないので、こちらからの受講者への問いかけはない、もちろん質問もない。1時間という時間というのは極端な事態だが、通常の対面型研修よりも時間が短くなることは予測される。
良くも悪くもこのような研修を要望されるクライアントが増えることは予想される。要するに、受講者とのやり取りはなく、講師が一方的に話す、受講者は別途ディスプレイを見ながら講師が話していることを理解しようとする。もちろん、オンラインであれば、講師から受講者に質問したり、受講者が質問したりする場面があり得るだろうが、オフライン型のビデオ研修ではそれは叶わない。受講者が数人レベルであればオンライン研修であっても、受講者の顔を見ながら理解度を確認しながら講義を進めることは可能だろう。しかし一般には、オンライン研修やビデオ研修では、どうしても受講者の理解レベルが下がるのは避けられない。講師の力量が問われることに繋がるかも知れない。
演習形態を取り入れる
上記のオンライン研修やビデオ研修の欠点を補うことを目指して、演習を取り入れることを提唱したい。なあんだ、「演習か、当たり前だな」と思わないで欲しい。一味違う演習形態を想定している。
先日、ある企業での研修講師を務めた。緊急事態宣言は解除されていたが、まだまだ多人数の前で話すことに何となく違和感がある中での研修となった。もちろん全員がマスク着用の中での研修だ。研修前に受講者でもある社長から、『早めに終わってもらって結構です。演習があるなら、それは先生の講義の終了後に全員にさせます』という申し出があった。用意していた研修は、ある仮定の主人公になってもらい、業務上の複数の課題を与え、それぞれの課題への対応を考えてもらい、それら対応を記述してもらうという回答形式の演習だった。さらに、それらの回答を、自己採点してもらうことになる。もちろん、自己採点の方法と基準は別紙を用意しておき、自己採点の前に配布する予定だった。
このような演習の最大のメリットは、自身の研修内容の理解度や自身のスキルレベルを測ることができるということだ。なぜそれらを測ることが重要かと言えば、スキルアップを図るには、何を行なえば良いのか分かるというということだ。スキルアップを測れない研修は、ある意味で無意味だと思う。そもそも研修とはレベルアップ、スキルアップを図るために行うもので、レベルアップ、スキルアップを図るには、自身に足りないこと、強化すべき分野を知ることが求められる。
このような演習を行うには、講師は事前に、研修目的に即した演習課題を作成する必要がある。決して安易に作成することは出来ないし、多くの場合は企業の業務に即してカスタマイズした演習課題を作成する必要がある。
前述した企業研修において、社長が早めに終了してもらって結構だと話したことの真意は不明だったが、演習時間を1時間程度想定していたので、研修時間は1時間の短縮となった。それでも当初想定していた研修の効果は十分にあったと考える。オンライン研修・ビデオ研修では重要なポイントを講義し、後半は演習を取り入れるという組み合わせの研修が効果ある研修の一形態だと再認識したのだった。