アンガーマネジメントという管理手法がある。要するに、アンガー(怒り)をマネジメント(管理)するという分野だ。何のために“怒り”を管理するかと言えば、人間関係を円滑にするためということだ。人間関係を円滑にするコミュニケーション手法の一種ということだろう。

確かに、“怒り”を他人にぶつけることで長年築いてきた人間関係が一瞬にして崩壊した経験がある僕にとっては、管理することが有効なように思える。しかし、 “怒り”を管理することによって、自分を抑え込む、抑圧するという自身への負の影響が懸念される向きもあるかと思われる。この当たりを考えてみようと思う。

アンガーマネジメントの効用

アンガーマネジメントとは、怒りを抑え込むという面もあるが、むしろ怒る時と怒らない時を峻別して、怒るべき時は怒り、そうでない時は怒らないようにしようという考え方だ。人は誰でも怒ることがあるはずだが、怒りっぽい人は、怒りに達するハードルが低く、その怒りのレベルも我を忘れるほど高いということだろう。逆に、あまり怒らない人は、怒りに達するハードルが高く、何があっても怒ることがなく、たまに怒ることがあったとしても、そのレベルは周りが気づかないほど低いということだろうか。

人が何かに怒ることに良い面があるように思えない一方で、多くの悪い効果のみが見られる。まず、怒る本人にとって一時的には心がスッキリするこというこがあるかも知れないが、しばらくすると自身の振る舞いを振り返り、なぜあんな言葉を感情に任せて発したのかと反省する向きも多いのではないだろうか。冷静に考えれば、人間関係を壊す意味など何もないはずなのに・・・。一方で、他人から怒りの感情をぶつけれた方は、自身に非があったとしても理不尽だと思うだろうし、悲しくなったり、相手を恨むことに繋がる。怒る人、怒られる人双方にとって良いことなど何もない。

でも怒らずにはいられないこともあるというのが実情かも知れない。怒ることの唯一の効用は何だろうかと考えると、自分を押し殺した感情を貯め込まないことぐらいだろう。心の一時的な平安を得るための感情の発露になるのだろう。

心の平安を得るためなら、怒りという感情を発しなくとも可能になる唯一の方法がアンガーマネジメントという手法である。誤解されがちだが、アンガーマネジメントとは感情を押し込めることではない。アンガーマネジメントとは、怒りに達するハードルを高くする手法である。そもそも怒りに達する感度を低めるということでもある。怒りを感じなければ、自身の抑圧にはならないので、そもそも心は平安なままだろう。

自身の心を常に平常状態に保ち、冷静な対応が可能となり、人間関係を複雑にする要素を排除するこということに繋がるのだろう。

アンガーマネジメントのテクニック

アンガーマネジメントの幾つかのテクニックを紹介する。

①自身を客観視する

怒っている自分の姿を客観視できると、怒りは静まる。普段は自分の口調や表情などを直接に見ることは出来ないので、怒っている自分がいかに醜いか、愚かな行動を行っているのか知らない。感情的になった自分を、誰かに依頼してスマホなどで撮影してもらうことが出来れば、自分の愚かしい姿を見ることが出来る。そこまでしなくても、怒りに任せた自身の姿を、想像することが出来れば、きっと怒る自分は恥ずかしいのだと実感できるだろう。何しろ、感情的な自分は恥ずべきものだというのは誰もが実感していることだろうから。

②怒りが静まるを待つ

6秒ルールというものがあるらしい。すなわち、高いレベルの怒りであっても、6秒過ぎれば半減するという法則らしい。この数字にどこまで信ぴょう性があるのか不明だが、確かに時間経過とともに、怒りは静まるのは確かだろう。そうであれば、怒りのピークを過ぎてから、怒りを相手にぶつけるのかどうかを判断しても良い。そうすることで、怒る必要がない事態では、怒りの感情発露に繋がらなくなる。そもそも怒りという感情が生じなくなる可能性がある。

③怒りの相手の感情を思いやる

人間関係は、自分と相手とも相互関係である。相手も自分は同じ程度に感情を持っているはずだし、喜んだり、悲しんだりする。このような当たり前のことに気づかない場合がある。自分が感情的になった場合は、相手の感情など無視して発言してしまうことがある。自分がこのような言葉を発すると、相手はどのような感情に陥るだろうかと想像してほしい。過剰に相手をおもんばかる必要はないが、少なくとも相手にも立場があり、自分の言動で傷つくのかどうかぐらいは推し量ってほしい。

④過去の怒りを時折振り返る

過去に自分はどのような事柄に怒ったことがあるのか振り返る機会を持つ。このようなことが出来れば、何に対して、誰のどのような言動に対して怒りという感情を持ったのかを客観的に知ることが出来る。そうすると、自分の怒りの傾向が見える。例えば、自分を無視する他人の言動に過敏に反応している、何でも自分に頼り過ぎる行動に怒りを感じるなどだ。その内容は人によって様々だろうが、自分の傾向を知ることで、その事態への対策を立てることが出来そうだ。自分を無視することに怒りをぶつけがちな人は、自分のそのような弱さを周りの人たちに宣言してしまうという対策などだ。それらは多様なものになるだろうが、少なくとも怒りが結局は何の役にも立っていないという事実を知ることは出来る。

アンガーマネジメントの限界

アンガーマネジメントには様々な手法があるといっても、所詮は自分の感情を自身でコントロールしているにすぎません。特に職場で“怒り”が発生するとすれば、肝心の問題である自分と相手との齟齬に関して、根本的な調整やすり合わせは欠かせない。アンガーマネジメントでは、自分を抑えるという側面が強い。齟齬を感じる相手とじっくり話し合って、何が問題なのか、どうすれば良い方向を見つけられるかなどを話し合う機会を持つということが重要なのです。

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