前回のコラムに引き続いて、事業再構築補助金について考えてみたい。まずは次のYouTubeの映像を視聴していただきたい。

このYouTubeでは、この補助金に関して分かっていることを述べている。現在は、この補助金の事務局公募が締め切られた(2月4日締切)段階であり、実際に中小企業向けに公募が始まるのは、体制が整えられた後の4月頃と思われる。その段階にならないと、詳細は分からないはずだが、既に多くの中小企業経営者ならびに私たちのような支援者が情報を入手しようと動き始めているらしい。

補助金は麻薬か

健全な経営とは、事業活動で獲得した資金を元手に、新たな事業活動に再投資し、さらに売上・利益を上げて株主や従業員に還元するということであり、これに異論をはさむ人はいないだろう。「そんな分かり切ったことは聞きたくない!」と叱られそうだが、このようなサイクルを壊しかねないのが、補助金という「麻薬」だろう。

麻薬という言葉を使ったが、一度でも補助金を得ると、何度でも使いたくなるという意味で「麻薬」なのだ。また、この麻薬は、労せずにお金が得られることで本業がおろそかになりかねない恐れもある。どんな「麻薬」も、使わないで済むなら使わない方が良いと思う。現実に、モノづくり補助金や持続化補助金のリピーターは結構存在しているらしい。僕は数百人の経営者と会って色々な話し合いをしているが、尊敬に値する経営者であって補助金のリピーターである人には出会ったことがない。補助金のリピーターが尊敬に値しないわけではないし、逆に補助金を使ったことがない経営者が全て尊敬に値するわけでもない。誤解を恐れずに述べると、補助金のリピーターである経営者は、そこそこのレベルなのかなという感覚なのだ。そこそこのレベルとは、経営努力は惜しまず、何としてでも経営業績を良くしようと思いを巡らしている経営者ということだ。

失礼な言い方かもしれないが、僕を含めて大半の経営者は、「そこそこのレベル」だろう。そこそこのレベルの経営者は、「麻薬に溺れずに」、補助金を有効活用してもらいたい。「麻薬に溺れずに」とは、有効な施策に絞って、必要なタイミングで必要な額の補助金を得るという意味である。

新たな試みには資金が必要

経営者であれば、常に経営上の新たな試みを目指すものだろう。新たな試みとは、「経営改善策」、あるいは「新規事業の創出」だと捉えても良い。経営改善策、新規事業創出のいずれに着手するにしても、まずは必要になるのが、「知恵」と「資金」である。

この知恵と資金のどちらが優先されるか、簡単には答えが出ない。一般的には「知恵」、すなわち新規事業のアイデアや事業構想が第一にあるべきという意見が優先されそうだが、そうでもないかも知れない。「資金」があれば、アイデアや事業構想を創出することが可能となるからだ。すなわち、企業に資金的余裕があれば、社内外の人的ネットワークを駆使して知恵を出し合う余裕が生まれるし、場合によっては、私たちコンサルタントの支援を受けても良いだろう。

どのような事業であっても、知恵を出し合えば、「経営改善策」あるいは「新規事業の創出」の中身の具体化は可能になる。この意味で、新たな試みを行うに、第一に優先すべきは「資金」ということになる。

「資金」に関しては、なかなか思うように得られないということが多くの経営者にとっての真実だろう。サービス業なら新たな集客用システム構築への投資、製造業なら新たな製造装置の購入などは、が必要になる。そのための資金は借入を行うか、自己資金で賄うかだが、第3の方法として補助金が考えられる。事業再構築補助金は、まさにこの第3の方法を広く提供するものである。

本当に必要なのは、アイデア創出のプロセス

今や国の中小企業支援策として本流になっている補助金制度であるが、真に中小企業に必要な支援策は、補助金ではないのかも知れないと思っている。僕が日頃接している中小企業経営者は、今後何を行なえば良いのか、経営状況を改善するために何かの打ち手が必要と思っているが、それが見つからなくて苦しい思いが継続していると感じている。

僕がコンサルタントとして活動する中で、クライアントの新規事業のアイデア創出に寄与することもあるが、僕のようなコンサルタントが創出する事業アイデアは本物ではないのかも知れない。もっと経営者が取り組むべきだと、本気になって思い込むような新たな試みの中身が必要だと思っている。

数か月を要しても良いので、経営者自身が事業アイデアを考え出す仕組み、プロセスを提供する支援策が求められている。そのような支援の具体化策は僕自身が見い出せていないが、国の支援策の中身として提案していこうと考えている。

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