つい最近のこと、ある事業者から相談を持ち掛けられた。その相談とは、「社内でテレワークを導入したい、でも、その知見がないし、相談できる業者にも心当たりがない」ということだった。ちなみに、設備費用には小規模事業者持続化補助金の活用、その前に経営革新計画の申請も考えているとのことだった。

もちろん、いつでもどんなことでも私への仕事の依頼なので大歓迎なのだが、いささか面倒になるような予感がする。補助金申請や経営革新計画申請はともかくとして、テレワーク導入のためのシステム構築については自信が全くない。自身がないとは相手に言えるわけはなく、「テレワークの導入には色々な方法がある。一般的にはVPNというシステム構築を行う必要がある」と話す。ちなみにVPNとは、Virtual Private Network(仮想専用ネットワーク)のことであり、物理的に離れている拠点のネットワーク結ぶものだ。 コンサルタントは何でも知っているという風に振舞わなければならないので、詳しく知らなくても、まずはVPN程度の専門用語はさっと口から出るようにしておかねばならない。これを実践したわけだ。

なぜ、専門用語であるVPNを知っているかと言えば、某IT事業者のコンサルティングを行っているからだ。その事業者へのアドバイスの中で、詳しくは知らないけれどもVPNという言葉を使いこなしているということだ。そこで当然の帰結として、これら二つの事業者を繋ぐことを思いつく。すなわち、前者の事業者(建設業者)が計画しているテレワークシステム構築に際して、後者の事業者(ITシステム業者)を推薦して、実施計画の中に、IT事業者を巻き込むことをもくろむ。まずは提案書作成を、そのIT事業者に依頼することになった。

事業者は助け合うべき

上記の例のように、私たちコンサルタントは多くの事業者の内実を知る立場にある。その内実とは、経営課題であり、事業者の課題であり、また弱みであったりする。コンサルタントは経営課題の解決に向けてアドバイスする。観念的なアドバイスするだけでなく、具体的な実践方法を示す必要がある。その際には、多くの事業者を知っていることが強みになっているのだ。

SWOT分析手法は広く知られている。通常は、SWOT分析とは一つの会社の活動範囲内で試みられる。例えば、クロスSWOT分析では、ある自社の強みを環境要因である機会に投じることで、新たな経営の打ち手を講じる。また、自社のある弱みを補うために、世の中の機会を利用し、危機を脱する打ち手を見い出す。多くの打ち手を発想する手法がクロスSWOT分析と呼ばれる。

このようなSWOT分析の手法を、企業の枠を超えて活用できることが私たちコンサルタントには可能ということだ。すわなち、ある会社の事業課題を解決するに際して、他の会社の強みを活用することができる。一方の事業者の経営課題解決のために、他の事業者の強みを結び付けるのだ。そして、それらの組み合わせが、互いの企業の成功に繋がるのではないかという発想が私たちには求められる。

他業界を知っていること

事業者は互いに助け合うべきということは、普遍的な “是”だと言える。では、どのような形で、助け合うべき事業者が知り合えるだろうか。同業者同士であれば、業界団体などの機会で知り合う機会は多いだろうが、他業界の業者と知り合う機会は意外と少ない。このコラムの冒頭で述べたように、助け合える事業者は、同業者同士であるよりも、異なる事業者同士であることが多いはずだ。私たちコンサルタントは、様々な企業と知り合う機会が多い。例えば、私は今までにざっと数百社と付き合ってきただろう。個々の経営者と向き合って議論し、その中で事業者の強みも弱みも知ったことになる。しかも、その業種は多種多様に及んでいる。このように多くの企業の内情を知っていることが、私たちコンサルタントの強みとなるのだ。

私たちは、二つの企業を結び付けるチャンスを持っているということになる。

守秘義務に注意する

事業者を結び付けるといっても、むやみに何でも結び付けて良いものではない。顕在化した経営課題は、企業の弱点であるあるかも知れない。その弱点を何でも他企業に晒して良いとも思えない。守秘義務を守る義務がある私たちは、個別企業の内情を他に話して良いはずもない。話す際には、「ある懇意にしている企業が・・・」と実名を隠して話すことが求められる。

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