多くの企業は「経営理念」を掲げて事業活動を実践している。経営理念とは、「理念」という言葉通りに、観念的なものであり、「思い」、「追求すべき姿」、との言い換えても良いと思う。企業が存在し、経営として何を追求するのか、理想は何なのかを表現したものだろう。

経営者が他に掲げるものには、「ビジョン」というものもある。これは文字通りに、将来のあるべき姿という意味であり、経営理念を具現化した未来像とでも称されるものだ。

さらに、「行動指針」を掲げている経営者も多い。これはまさに、経営者や従業員などの日常行動の指針というもので、「企業理念」や「ビジョン」よりも、位置づけは明確だろう。

要するに、最上位に「経営理念」が位置し、その下位に「ビジョン」、さらにその下位に「行動指針」があると理解することができる。

私たちコンサルタントの仕事として、経営理念などの立案支援がある。私も何度か、経営理念立案の仕事を行った。経営理念というものの本質は、経営者の思いであり、「経営者自身しか具現化できませんよ」と言いたいのだが、それでも一人では迷ってしまい経営理念を考え出すことが出来ない経営者もおられることは事実だろう。また、特殊な事情があり、経営理念を決めるについて、コンサルタントの助けが必要となる企業も存在する。そんなときには、経営コンサルタントの出番となる。

経営理念を立案するためのフレームワーク

私が「経営理念立案支援」に際して使用するフレームワーク・シートを紹介する。次のような質問項目からなっており、経営者にインタビューする際に使用する。

当社の創業の経緯は
一緒に仕事をする上で仲間に期待すること、また、あなたがしてあげたいことは
自社の強みは何か
地域社会に貢献したいことは
好きな言葉・メッセージは
お客様に約束したいことは
理想・モデルとする会社の具体名は、またその会社をなぜ理想と考えるのか

全てに答えなくても良いが、このような質問項目に答える中で、自身が何を目指しているのか、事業の価値は何にあるのか気付いてもらうことを狙っている。あるいは、このような質問への経営者の回答の言葉を俯瞰して、経営者になり代わって経営理念の案を、言葉として創出することになる。

迷った際には

経営者に経営理念を立案してくださいと依頼すると、多くの方は迷われる。色々な思いがあり過ぎて、一つに決められないらしい。その場合には、無理に一つに決める必要はないと助言する。色々な思いがあり過ぎるといういうことは、様々な切り口があることだろう。切り口の多くは、次に集約される。

① お客様

② 社会全体、地域

③ 従業員、株主、取引先

①のお客様の切り口とは、「お客様に喜んでもらえる商品やサービスの内容はどのようなものか、どのように喜んでもらえるのか」などを表現したものだろう。

②の社会全体・地域の切り口とは、「我が社の商品あるいは提供するサービスの社会的な意義は?  社会的・地域的な貢献は?」などを表現したものだろう。

さらに、③の従業員・株主・取引先とは、「事業を継続する中で、これらの人々にどのような満足を与えられるか?  喜んで我が社に参画してもらう意義は?」などを具現化したものだろう。

できれば、この3つの切り口に沿って、それぞれを言葉として表現してもらいたい。3つともあっても良いし、その内重要と思えるものを一つに絞っても良い。

ビジョンと行動指針

私の感覚では、経営理念を考え出すよりも、ビジョンと行動指針を作り出す方が難しい。経営理念とは、自身の思い、理想の姿などを表現したものなので、ある意味で独りよがりであっても良いし、他の人に理解されなくても良いと言える。しかし、ビジョンと行動指針は、独りよがりであってはならない。他の人に理解され、それに沿って行動してもらうことが求められるものだからだ。

ビジョンとは将来のあるべき姿であるので、抽象的ではなく明確に具体的に表現する必要がある。どのようになれば具体的なのかが理解しづらいのだろう。どうしても分からなければ、数字で表現することで良いし、地域的拡がり、目指す同業他社名であっても良い。さすがに他社名がビジョンであるわけにはいかないが、明確にするための方便として一時的に他社名を利用することがあっても良い。

行動指針とは日常行動の指針なので、日常行動から発想することが出来る。日常行動を具体的にイメージして欲しい。企業での日常行動は、営業業務、販売業務、生産業務、総務・人事・経理などの管理業務に分けることが出来るので、これらを想定しながら指針、すなわち心掛けるべきことを表現することになる。

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