先日、ある経営者と話していたところ、「これからは自宅で仕事をする」と話された。その方は70歳を過ぎているのだが第一線で社長業を行っている。そこで、そろそろ半引退生活に入るということだった。この方には高齢という事情があるのだが、昨今の新型コロナウィルス流行の影響でテレワークという働き方が一種のブームとも言える状況になっている。

その社長にお会いしたのはコンサルティング活動の一環であり、自身だけでなくこの機会にテレワークを全社で導入したい、ついては設備が必要になるということだった。そのための補助金を獲得したいということで、私に声がかかったということだ。最も可能性があるのは小規模事業者持続化補助金だろうが、ついては補助金申請の前に、「経営革新計画」の申請を行いたいということでもあった。

「経営革新計画」とは、まさに経営を革新するための計画を作成することであり、国が支援する中小企業支援施策の骨幹をなすものである。この経営革新計画が、そろそろ賞味期限切れになりつつあるということを痛切に感じた。

経営革新計画に必要な要件

経営革新計画の内容はそれぞれの事業者が自由に描くのだが、それには国が定めた要件がある。最も重要な要件は、新規事業であることだ。何が新規事業に相当するのかは、議論する必要があるが、私たちコンサルタントにとっては「経営革新に該当する新規事業」という枠組みが良くも悪くも組み込まれている。良くも悪くもと述べたが、新規性の定義が与えられているということだ。他の事業者が同じことを行っていないということに限られる。それであっても、他の事業者が行っているのか、いないのかの判定は微妙なケースが多い。全ての事業にとっては、世の中に同じことを行っている他の事業者がいるとも言えるし、そうでないとも言える。そうであっても私たちコンサルタントには、経営革新が定める新規事業に相当するのかどうかは比較的容易に判定できる。

この新規性の要件には、特に私に異論があるわけではない。というのも、経済を活性化させる源は、イノベーション、すなわち革新にあることだと信じるからだ。私が違和感を覚えるのは、もう一つの要件である経営指標の向上だ。経営指標の向上要件とは、次の3つである。

  • 経常利益の増加率
  • 付加価値額の増加率
  • 一人当たりの付加価値額の増加率

経常利益が増加することは、新規事業が収益性ある事業であることの証左であり、付加価値額の増加は、それら新規事業が経済的な意義があることの証左だろうと考える。

経済的寄与は時代遅れ

このコラムの冒頭で、テレワークについて述べた。テレワークそのものは、働くスタイルの変革をもたらすし、社会のあり方や人の生活にも変化を与えるものだろう。これはある意味で、イノベーションに相当する。テレワークは新規事業とは言えないかも知れないが、確実に経営にプラス効果をもたらすはずだ。経営にマイナス効果をもたらすテレワークなら、当然ながら導入しない方が正しい。ここで経営への効果とは、広い意味の経営効果ということで、利益や売上ということではない。

冒頭で触れた経営者は、テレワークの導入を自社の経営改革の一環として捉えている。しかし、経常利益の向上や付加価値額の上昇に必ずしも結びつかないかも知れないが、何より働く人の喜びに繋がるだろうし、この企業で働きたいと考える人が増えるだろう。手放しでテレワーク礼賛という訳ではないが、テレワークがもたらす経営効果は期待できそうだ。一方で、少しは通勤費という経費削減に役立つかも知れないが、経営への数値効果という点は見えづらい。でも少なくとも、テレワークを導入する企業は、従業員重視という視点を明確にしている。

話しは変わるが、「環境経営」という視点ではどうだろうか。これもやり方次第では、イノベーションに結び付く。経常利益や付加価値額の増加に結び付かないかも知れないが、経営目標の一環として、「環境経営」を目指す企業も多いはずだ。このように考えると、広くCSR(Corporate Social Responsibility)、すなわち「企業の社会的責任」や、ステークホルダーへの貢献や地域活動なども、広い意味でのイノベーションに結び付く。

このように、イノベーションの経営指標として経常利益や付加価値の向上だけを求めるのは、いささか時代遅れの感を否めない。

新たな指標を求めて

では、経常利益や付加価値額に代わるものとしての、広い意味でのイノベーションを目指す企業の目標値、経営指標はどのようなものだろうか。顧客満足度なのか、従業員満足度なのか。まだ正解は得られていない。少なくとも、イノベーションを表現する指標ということで模索し続ける必要がありそうだ。

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