昨年末に公表された「事業再構築補助金」が大きな話題になった。菅内閣の目玉施策として、令和2年度第3次補正予算の枠組みの中で大きく報道されたので、記憶に新しい方も多くいると思う。正式には、「中小企業等事業再構築促進事業」という名称で1兆1485億円という予算枠を確保したものだ。果たして、この補助金は中小企業の再生に役立つのか、個々の中小企業にとって意味があるのだろうか。

補助金疲れの中小企業

昨年はコロナ禍の下で、雇用調整助成金、持続化給付金、持続化補助金、モノづくり補助金など多種多様の補助金、助成金などが目白押しだった。今年もこの傾向は継続しそうで、その象徴的なものが事業再構築補助金だろう。

僕の知っている中小企業は、コロナ禍で仕事量が減って、その余った時間を使ってせっせと補助金申請に勤しみ、その甲斐あって多額の補助金を獲得したということだった。当然ながら補助金は、単にお金をもらうというだけではなく、報告書や領収書を取りそろえ、そもそも補助金の使途そのものが業績に寄与するのか不安なままで補助事業に時間を費やしているらしい。

このような例は特殊なものではない。僕のようなコンサルタントに依頼して申請書を作成してもらっている業者も多い。補助事業のアイデア、すなわち補助金を使って経営に有効な方策を考え出すことまで、コンサルタントに丸投げする中小企業者もいる。おかげで、僕などもそのような支援をして報酬をいただくことが最近は多い。

でも、昨年はさすがに行き過ぎだと感じることもあった。今年はさらに事業再構築補助金が加わるということで、まさに世は「補助金ブーム」と言えるのかも知れない。しかし、肝心の中小企業は、やや補助金疲れに陥っているようだ。もちろん、全ての中小企業が補助金を獲得しているわけではないし、申請したくても申請できていない企業が多いだろうが、少しはやる気のある中小企業は、補助金に無縁というわけではないだろう。

事業再構築という落とし穴

そもそも事業再構築という言葉は、事業を作り直すという意味であり、現事業をたたんで新事業を立ち上げるということに通じる。この発想は、菅内閣のブレインの一人であるイギリス出身のデービッド・アトキンソン氏の発想によるのだろう。彼の主張は、日本の生産性の低さは中小企業に原因があり、時代に合わなくなった中小企業は退場し、新たな活力ある中小企業を育てるべきであり、そうなれば日本全体に活力がよみがえるというものだろう。

確かに賛同する意見だが、多くの中小企業は現在も頑張っているだろうし、現事業をたためといっても、現実に古くから雇用しその道のエキスパートである従業員に、他の道を歩めと言っても戸惑うばかりの人や企業が大半を占めるだろう。

僕が考えるに、事業再構築という掛け声は、現実の今の中小企業という枠から離れて、新たな企業創出という枠の中で考えて、日本全体で見た場合も掛け声なのではないだろうか。要するに、新たな事業を創出したい人たちに手を差し伸べて、事業構築(あえて再構築とは言わない)を後押しする施策が求めるのだろう。例えば、学生であっても良いし、勤め人でも良い、さらに事業アイデアが豊富な中小企業者であっても良い。とにかく、新たな事業アイデアはあるが、資金的な支援が不足している人・グループ、事業を共に歩むネットワークを欲している人・グループに、事業チャンスを与えるための支援策を用意するべきだと考える。

新たな事業を考えてない人・経営者に、「さあ、新たな事業を考えてください」というものではない。それでは、全く本末転倒の話しで、そのような方たちの以前に、アイデアがあってもお金がない、パートナーが不足しているという人。グループに手を差しのべるべきではないかと思う。

そのような支援策は既に用意されているとおっしゃる方いるかも知れないが、私の知る限りは十分な公的支援策は見当たらない。存在するのは現在の中小企業への支援策であり、新たな事業創出を目指す人には、創業補助金が縮小されたという現実が立ちはだかり、ベンチャー投資家は私的なものしか見当たらないのが実情だと思う。

でも期待したいのは、事業再構築補助金

事業再構築補助金に否定的な事柄を上述したが、公募が始まってもいない補助金に批判をしても意味はない。まずはどのような仕組みで、どのような企業が公募対象なのか見てみたい。そのうえで、この補助金を使って、よみがえる中小企業が多く出ることを祈るばかりである。そのために、僕なりに精いっぱい企業支援をしてみたいと考える。

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