フランチャイズの成功に向けて(1)
今はずいぶんと少なくなったが、フランチャイズ本部を立ち上げたいというクライアントが結構いる。例えば、運営しているラーメン店が繁盛しているので支店を出したいが、初期投資が多額になるので、フランチャイジーを募って店舗を拡げたいというものだ。フランチャイズ店は、小売店、飲食店や対人サービス店、さらに学習塾など業種は様々で、このようなフランチャイズ展開を図るに当たって、コンサルタントの支援を受けたいいうことだ。店舗系の事業拡大の手段としては、フランチャイズ展開は最適に思える。自己資金で全ての初期投資を行うに際して、たとえ金融機関からの融資を受けるとしても資金面で限界がある。何しろ大規模な店舗なら初期投資は1億円を上回るかも知れないのだから。
フランチャイズ本部構築に際して考えたことを述べるつもりだが、その前に、フランチャイズ本部立上げ支援のコンサルティング依頼が少なくなった原因を考えたい。
なぜフランチャイズ本部構築のコンサルティング依頼が少なくなったのか
人口減や景気の落ち込みによって新規出店そのものの数が少なくなっていることが、私たちコンサルタントへのフランチャイズ本部構築への依頼が少なくなっていることの最大の要因だと思う。新規店舗の減少は、日本フランチャイズ協会などの統計データを見れば明らかであり、全体としてみればここ数年は微減という状況だろう。それ以上に、国内では多くの事業者でのフランチャイズ本部構築への意欲が削がれているようだ。それは、大きなチェーン店がますます強くなり、弱小チェーン店は勢いが弱くなっていることを反映しているように思える。例えばコンビニ業界では、Sチェーン、Fチェーン、Lチェーン以外は全く存在感を発揮していない。かつては、ローカルチェーンを含めて弱小店が存在感を発揮していた。そんな弱小チェーンの多くは、大規模チェーン店に飲み込まれてしまった。僕などは地方のローカルチェーンがあれば、用事もないのに出かけて店内を見回すことが楽しみだった。でも、そんな店は今では希少な存在になった。新店舗を出したい人は、大手チェーン店に加盟すれば、成功確率は高いので、わざわざ弱小チェーンに加盟したいと思う事業者は少なくなっているということだろう。
コンサルタントへのフランチャイズ本部構築への依頼が少なくなったことの別の要因は、新たな業種や業態が少なくなったことが考えられる。フランチャイズと言えば、飲食店、コンビニなどの小売店、学習塾など教育系、介護サービス系、リノベーションなど建築系、スポーツジムなど健康系に集約されており、新たな業種・業態が出現していない。というよりも、フランチャイズ業態は出現しつくしたと言うべきかも知れない。確かに、店舗系であれば上記に集約され、新たなビジネスはそれほど見当たらない。そうであるなら、フランチャイズ本部構築のノウハウは、私たちコンサルタントだけが有しているわけではないので、その業界での経験がある人に依頼して本部構築は可能かも知れないのだ。あるいは自社にそのような人材がいれば、多少のノウハウは他から得られなくとも、自社で作り上げられるのだろう。
新ビジネスモデルでフランチャイズ化は可能か
昨今の新規ビジネスモデルは、プラットフォームビジネスを始めとしたICTを活用したものが主流となっている。ICTを活用したビジネスの一つの側面は、初期投資がそれほど多額ではないということだろう。Webシステムを作るにしても、せいぜい1000万円程度だろう。初期投資が少ないと、チェーン化するのに他事業者の資金を使うフランチャイズシステムの利用価値は低くなる。
さらに代表的なICTを活用した新規ビジネスとして挙げられるプラットフォームビジネスでは、多店舗化するというニーズは、そもそも少ない。プラットフォームビジネスは地域を限定していないので、利用者は無限大でも原理上はあり得るからだ。したがって、巨大プラットフォーマーであるグーグルやアマゾン、さらに日本の楽天などとフランチャイズとは無縁である。
プラットフォームビジネスでは、そもそもフランチャイズ本部構築への意欲がない、少ないと述べた。それは、地域を限定していないからという理由だし、利用者が増えてもICTシステムであれば、何ら不都合はないからだ。しかしながら逆に言えば、地域限定のプラットフォームビジネスであれば、または利用者が増えるとスタッフの工数や手間が増えるたりするプラットフォームビジネスであれば、事業拡大のためのフランチャイズ展開は有効な手段となり得る。
例えば、ネット上の地域限定新聞では、もちろん地域別にネット上にて多くの情報を集めて公開するというものだが、こんなビジネスで多くの地域で自社展開することは工数の点でも、資金の点でも困難は多い。したがって、フランチャイズ本部を立ち上げ、地域別にフランチャイジーを募集することが有効な方法と考えられる。