突然ですが、経営のビジョンはありますか?

第三者からみれば、経営者ならビジョンはあって当たり前と思われているかもしれませんが、毎日業績の向上に追われている経営者にとっては、なかなかビジョンを描く時間も余裕も持てない人が多いかもしれません。

しかし、たとえ目の前の成果に終われていたとしても、将来的なビジョンを描くことは重要です。

ビジョンがなければ方向性が定まらず、行き当たりばったりの経営になります。いわゆる自転車操業になってしまう会社に多いのがこのタイプです。常に苦しい状態になってしまうわけです。

“目の前の飯”は重要ですが、中長期的に経営を安定させるには、ビジョンを描いてそれを達成するための戦略をつくりコツコツと実行していくこと必要があります。

中長期的な戦略を着実に実行して継続的に業績を向上させていくのに、きわめて有効なツールが「バランススコアカード」です。

実は、戦略を立案することはそんなに難しいことではありません。非常に重要なことですが、一定の知見があればできますし、積極的にプロを活用していけばよいからです。

最も難しいのは、立てた戦略を実行することです。

戦略の実行には、多くの人間がかかわりますし、目の前の業務に追われて風化してしまうことも多くあります。

バランススコアカードは、経営に必要な因子を「財務」「顧客」「社内プロセス」「学習と成長」の4つに絞り込みます。数値化して見える化するのでPDCAが回しやすくなり、戦略を達成しやすくするマネジメントシステムといえるでしょう。

バランススコアカードで戦略を着実に実行して、業績を継続的に向上させていきましょう。

バランススコアカードとは?

バランススコアカードとは、経営戦略を達成するためのマネジメントの仕組みです。

経営をうまく舵取りしていくには、一部の要素しかみていなかったり、洩れがあったりしていてはうまくいきません。しかし、経営と一口にいっても、様々な要素がありますので、細かく見すぎていてもうまくマネジメントをしていくことは難しいでしょう。

バランススコアカードは、経営を「財務の視点」、「顧客の視点」、「社内プロセスの視点」、「学習と成長の視点」の4つの視点から経営をマネジメントしていく仕組みです。

経営という幅広い要素が絡むテーマに対して注力すべき視点を4つに絞り込むことで、戦略の立案、それを達成するための組織運営を効率化することができます。とらえどころがない経営という業務を具体的な数字に置き換えることで可視化されるのです。

各視点の概要は下記の通りになります。

①財務…株主に対してどのように行動するか

②顧客…顧客に対してどのように行動すべきか

③社内プロセス…どのような業務プロセスが必要になるか

④学習と成長…どのように組織・従業員を成長させるのか

バランススコアカードはこれらの視点で経営の成長を図っていきます。

スコアカードとありますが、それは文字通り点数表をさします。学生時代に通知表を思い浮かべていただくとイメージしやすいでしょう。

通知表に嫌な思い出がある人もいるかもしれませんが、具体的に数字で評価されることで長所・短所を把握しやすくなりますよね。

会社を舵取りする立場になったら、学生時代のように自社の通知表が欲しいと思った方もいるかもしれません。

バランススコアカードは、各視点から数値化して目標として機能するだけでなく、分析を通して自社の長所・短所、改善課題が発見できる仕組みでもあります。

バランススコアカードは、なぜ中小企業の経営に有効なのか

これまで数多くのマネジメント理論が開発されてきましたが、バランススコアカードは1992年に提唱され今なおマネジメントの方法論として企業に導入されています。

様々なマネジメント理論が現れて消えていくなかで、バランススコアカードはなぜ企業経営に有益として現在も活用され続けているのでしょうか。そのメリットをみていきましょう。

◎戦略立案能力が向上する

バランススコアカードの各視点(財務、顧客、プロセス、学習・成長)の内容は、経験や勘で決めていくわけではありません。現状を分析し、戦略を立案していく中でバランススコアカードを完成させていきます。

“高付加価値路線でいこう”、“ニッチ戦略でいこう”といった曖昧な戦略では行動を起こしにくく成果も期待できません。しかし、バランススコアカードで戦略を4つの視点に分解して数値化することで戦略を可視化でき実効性が高まります。バランススコアカードに落とし込むことを意識して戦略を立てていくことで、戦略立案能力を向上させることができます。

◎戦略を社内に浸透させ組織パフォーマンスを引き出せる

バランススコアカードは経営を4つの視点に分解し数字で指標化します。曖昧になりがちな経営戦略を具体的な数字で見える化するので社内に浸透させやすくなります。

組織のパフォーマンスが十分に発揮されない大きな原因の一つに、目指すべきビジョンとそれを達成するための自分の役割が理解されていないことがあります。

自社がどんな方向を目指しているのか、自分が何を期待されているのか、バランススコアカードで可視化することで戦略が組織に浸透し、組織のパフォーマンスを引き出します。

◎自然にPDCAが回り、目標を達成しやすくなる

バランススコアカードを完成させてそれを達成するために計画―行動―振り返りをしていくことは、PDCAを回すことそのものです。

PDCAはビジネスのフレームワークとして認知はされているものの実践できている人というと途端に少なくなります。

目標を達成するには、計画-行動-振り返りが欠かせません。バランススコアカードを戦略にとりいれることで、自然PDCAを回していくことができるようになります。

このようにバランススコアカードには様々なメリットがあります。

しかし、最も有益といえるのは、導入するのに規模や業態を問わないことではないでしょうか。

フレームワークは基本的に考える切り口を与えてくれるだけで、正解を教えてくれるわけではありません。

そのため、フレームワークを活用しようとするとき、多くの場合が自分の業種・業態に合わせて柔軟にフレームワークを変更していく必要があります。フレームワークを知っていても、自分に置き換えて使いこなせないとお悩みの方が増える原因です。

しかし、バランススコアカードは規模や業種・業態にかかわらず、ほぼそのまま活用することができます。

大企業にしか通用しない方法論ではなく、中小企業にもバランススコアカードは有効なのです。

バランススコアカードの導入ステップ

バランススコアカードの導入で大切なのは、一つ一つステップを踏んで設定していくことです。

経営戦略というある意味抽象度の高いテーマを扱うので、要素に分解することと順を追って設定することを守らないと途中で混乱するでしょう。複数の人間が関与するわけですがから、それぞれの理解度も確認しながら進めていく必要があります。

バランススコアカードの導入は次の6つのステップで導入していきます。

  1. ビジョンの設定
  2. 戦略の設計
  3. 戦略目標の設定(バランススコアカードの定義づけ)
  4. 重要成功要因(KSF)を見極める
  5. KPIの設定
  6. アクションプランの設定

◎ビジョンの設定

まずはたどり着きたいビジョンを設定しましょう。目指すべきあるべき姿を描くのが第一ステップとなります。すでに、ビジョンがある場合は念のため見直しをしましょう。

ビジョンが明確になっていることは戦略を構築する上でも重要ですが、目指す姿を共有し組織のパフォーマンスを引き出す点においても大切です。

◎戦略の設計

ビジョンをビジョンのままにしておいては、まさに“絵に描いた餅”となります。そのビジョンを達成するための戦略を練ることが重要となります。

戦略というと難しく聞こえますが、要点は「誰に、何を、どのように」の3語しかありません。現状を広く分析していくことが大切ですが、最終的にはこの3語に収束させていきましょう。また、「誰に、何を、どのように」を決めたら、それを達成するための組織体制も同時に決める必要があります。

戦略の立案方法には様々な理論が提唱されていますが、3C×SWOTがシンプルでわかりやすくおすすめです。

3Cとは、「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の3つの頭文字を取ったもので、マーケティング環境を抜け漏れなく把握できます。SWOTとは、「強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)」の頭文字から命名されたフレームワークです。

基本的に、機会があり強みが活かせる市場を狙うことが戦略の原則です。3Cで集めた情報をSWOTというじょうろを通して、「誰に、何を、どのように」に落とし込むイメージです。

◎戦略目標の設定(バランススコアカードの定義づけ)

ビジョンを達成するための戦略を構築したら、バランススコアカードの各視点にもとづいて戦略目標を設定していきます。

戦略は曖昧になりがちですが、バランススコアカードの各視点に分解し、それぞれに目標を設定することでこの後の重要成功要因の決定やアクションプランの作成がしやすくなります。

戦略目標は具体的な数字で設定することが原則です。例えば、財務の視点でいえば、「収益の増加」や「利益率の向上」だけでなく具体的な数字を設定しましょう。また、戦略目標は戦略マップに落とし込むことで、因果関係の整合がとれているかを確認していきます。

◎重要成功要因(KSF)の発見

重要成功要因の特定とは、目標に対して何をすべきか、最も重要な課題を発見することです。目標は一つの行動で達成されることは少なく、いくつかの要因に分解できます。しかし、最も重要な課題である重要成功要因(KSF)に集中することが重要です。

目標を達成するために様々な課題が挙げられると思います。しかし、すべての課題を一度に解決するのは現実的に難しいでしょう。経営資源には限りがあり、すべての課題を解決しようとすると中途半端になりどれも解決しないことになります。

特に経営資源が大手と比較して圧倒的に少ない中小企業の方が、逆にあれこれと手を出しすぎる傾向になります。経営課題が多くなりがちな分、一度に様々な課題を着手してしまうのが要因のようです。企業規模を問わず、最も重要な課題に集中することが大切です。

◎KPIの設定

KGI(最終ゴール)を達成するために様々な課題を列挙し、その中から重要な成功要因(KSF)を導出しました。

KPIはKSFを含めて課題を数値化したものです。

例えば、KGIが売上00円達成といったものなら、KPIはそれを達成するための課題として、プレゼン勝率00%、商談数00本などがKPIの候補として考えられます。

当然、最も重要なKPIはKSFを数値化したKPIとなります。

◎アクションプランの設定

KPIを達成するための具体的なアクションを計画していきましょう。

せっかく戦略をたてても行動されなければ意味がない、という教えは聞いたことがあると思いますが、実際に目標達成で失敗する原因のやはり行動されないことが多くなっています。

なぜ、行動できないのでしょうか。

組織、個人によって原因は様々ですが、大きな要因として「具体化が弱い」ことが挙げられます。

KPIがプレゼン勝率のアップとしたら、それを達成するためのアクションとして、「プレゼンセミナーに参加する」、「企画および企画書の質を上げる」等が考えられます。

多くの場合、アクションがこの程度の具体化レベルで終わってしまいます。

この場合、「0日の0時からセミナーをネットで調べる」、「企画書作成の本を読む。0日に本屋に行く」など、行動できるレベルまで具体化することが重要です。

ここまで具体化すれば、後はやるかやらないかだけの世界になります。迷いが行動を妨げるので、アクションプランを立てたら具体化レベルもチェックしましょう。ポイントは手帳のスケジュールに書けるぐらいまで、具体化させることです。

まとめ

バランススコアカードは、組織のパフォーマンスを引き出し、戦略の実行力を高めます。また、具体的な指標に落とし込む作業を通じて戦略立案の能力も向上するでしょう。どの業界においても競争が激化しており、戦略立案能力とそれを確実に実行する力は現代の企業における必須の能力といえるでしょう。

バランススコアカードを活用し、経営の安定成長を目指してください。

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