質問力を高める
コーチング技法は7つのスキルに分かれ、その一つに質問スキルがある。私がカウンセラー試験に合格するための実技トレーニングを受けていたころ、難しいなと感じたのが、この質問スキルだった。質問とは、いくつかの種類に分類される。真っ先に想起されるのは、知らないことを知るための質問がある。これは単なる“質問”であり、多くの方が当たり前のようにこの質問を行っている。
コーチング技法を挙げられる“質問”とは、このような単なる質問ではない。相手に考えさせ、気づかせ、行動に結び付けるための質問だ。この質問力を高めると、あらゆる場面で役立つという。
<質問を分類する>
質問の分類法は幾つかある。例えば、クローズド質問とオープン質問という分類がある。クローズド質問とは、Yes/Noで答えられる質問であり、「今日は気分が良いですか?」、「今日の仕事に結果が出ましたか?」などだ。オープン質問は逆にYes/Noでは答えられない質問で、「今日はどんな気分ですか?」、「今日の仕事の出来栄えを、さらに良くするにはどこを改善すべきですか?」などだ。クローズド質問に答えるのは、YesまたはNoを選ぶだけなので、答えやすい。だから、相対しての初めての質問に使うことが多い。一方で、クローズド質問に答えるには、自身の考えをまとめることが必要なので、いきなり発することは避けたい。
また、チャンクアップとチャンクダウンという分類がある。チャンクとは、“かたまり”を意味する。その“かたまり”をアップする(物事を上位概念に上げる)質問と、ダウンする(物事をさらに具体化する)質問ということになる。「それは一言で言えば、どのようになりますか?」と、「その具体策として挙げられることは何ですか?」などと使い分ける。様々な事象があり、結局のところどうなのか、大きく言って何なのかを明らかにする質問がチャンクアップということ。物事を具体的にする必要があるときにする質問がチャンクダウンということになる。
基本的な分類としては、5W3Hの分類がある。これらはもちろん、Who, What, When, Where, Why, How, How much, How manyのことであり、この内容を質問することは日常に行っていることだろう。
過去質問/未来質問、否定質問/肯定質問という分類もある。これらの質問の種類を知っておくことは質問力を高めるために役立つのでぜひ知っておいて欲しい。
<相手に考えさせる質問>
質問の極意は、相手に考えさせるということだろう。単なる質問は、こちらが知らないことを単に質問するのみであり、こちらのためにする質問ということになる。例えば面接で、「どうして我が社に応募されましたか?」、「自宅から職場までどのような経路で通勤することになりますか?」などの質問がある。このような質問は、こちら側が知りたいことを質問しているだけであり、相手の気づきを促すものではない。
相手に考えさせる質問で使いやすく、誰でも発せられる質問は、「もう少し詳しく説明できますか?」、「そのようなことがあって、あなたはどのように感じましたか?」、「あなたの出来栄えを点数で言えば、何点ぐらいになりますか?」などの質問だ。このような質問は、一定パターンがあり、したがってあらゆる場面で使うことができる。それであっても、相手に考えさせ、新たな視点を提供することができる。このような質問に答えることで、重要なことは何なのか、次にどうすれば良いのかなどを考えることができる。
さらに高度で相手に考えさせる質問は、相手の意見を聴く質問ということになる。例えば、相手が「私は転職した方が良いのかな」という言葉を発したとしよう。それに対して、「なぜ転職したいのかな」という質問をしたとしても、相手が予め考えていることを答えるだけになる。ここで、「どんな職業に就いたら、君は満足するのかな?」という質問には相手は即座に答えづらいはずだ。考えてからでないと答えられない。その思考が、転職という選択肢が良いのかどうかという判断にまで視点を拡げることに繋がる。
また、他の相手に考えさせる質問に挙げられるのが、過去の体験や今後の行動を聴く質問だろう。「あなたはあの時にどんな風に感じましたか?」、「あなたの身の上にこの出来事が生じた場合は、まずどんな行動をとりますか?」などの質問だ。
<質問のポイント>
効果的な質問をするのはある程度の経験が必要だし、それ以前に質問スキルを知っておくことが求められる。このように奥深い質問スキルだが、その質問のポイントを以下にまとめる。
- 質問の目的を明確に持つ
質問は単に知らないことを知るためにするのではない。質問には明確な意図がなければならない。相手が気付いていないことを気付かせる、相手の行動を促すなどの目的を意識しておくことが重要である。
- 答を誘導する質問、詰問する質問は避ける
自分は答えを知っており相手が知らない場合にする質問を誘導質問という。例えば、「この方法ではどんな結果になると思うか?」などだ。また、「君はどんなつもりでこんな行動をとったのか?」などは詰問質問だ。決してこんな質問をしてはならない。
- 質問は1回に1つだけにする
質問は立て続けに行うべきではない。相手にとって質問は重いはずだ。特に自分よりも上位と思われる人から発せられる質問には、慎重に考えて答えているはずだ。質問する側は何気なく質問しているつもりでも、相手は考えながら答えている。質問への受け答えには十分な時間をとって、互いの信頼関係を構築するべきだろう。